「思い込みと感覚」
大浦家の長女であるトミさん。
彼女はある現象に対して、思い込みがあります。
ある現象とは、「咳き込み」です。
そして思い込みとは、「寒いと咳き込む」です。
寒さと咳には医学的に因果関係があるようで、原因は様々ですが、
寒さに対して過度に気管支が反応してしまう事で起こるようです。
なので、言っていること自体は間違いではないのですが、
トミさんの場合、自分がその該当者である。
という思い込みが強いようです。
そしてもう一つ。
これは生来のものなのか、
高齢になり衰えたからなのかは不明ですが、
(※おそらく後者だと思いますが。)
暑さへの強さ、もしくは感覚の衰えです。
この二つが悪い相乗効果を発揮し、
トミさんを一年を通して、脱水や熱中症へ誘おうとします。
この一年は、まさにこの思い込みと感覚との格闘でした。
冬は服を着こんだ上で厚手の毛布を2枚、さらにその上へ掛布団。
その上、部屋には暖房がかけられています。
当然、汗だくになります。
すると身体が冷えて寒くなるので、
もっと暖かく、もっと暖かくと悪循環。
こんこんと説得し、一枚減らすことに成功。
しかし、次の日には忘れているので埒があきません。
これを解決したのは、湯たんぽでした。
長い冬が終わり、安心したのも束の間。
まだ戦いは終わっていませんでした。
来たかと思った時に春は過ぎて、夏。
高齢者にはクーラー嫌いが多いのですが、
うちの長女はさらに上を行きます。
扇風機も嫌い。
ちょっとでも風が当たると寒いと感じるようで、
「咳がでるけん切っとくれ。」と、
敏感に反応します。
冬ほどではありませんが布団も当然着込むため、やっぱり汗だくになります。
隠れてクーラーを入れてもすぐに察知され、
「クーラー入っとんやないんな? 切っとくれ。」
どうやら風とエアコンの電源ランプでクーラーを察知していることが判明。
電源ランプを隠してみる。
「あれ、こりゃクーラー入っとんやないんな?」
「入ってないよ!ランプ点いてないやろ」
「おかしいなぁ、なんか風が来よるで」
さらに力技で家族に布団を持って帰ってもらい、夏布団だけしかない様にしてみるなど。
激闘の末、何とか汗をかかずに眠れる環境を作ることができ、慣れて頂く事ができたのでした。
もちろん、咳き込むことはありません。