「今を生きる」
人間は慣れる生き物だ。
朝、目を開けるといつもの部屋の風景が見える事。
自分の身体を自在に動かし、ベッドから起き上り動ける事。
家族と顔を合わせ、「おはよう」と声を発する事が出来る事。
家族からの「おはよう」が自分の耳に届く事。
朝ごはんを口から食べられる事、
そしてその味を感じる事。
そんな当たり前に出来る事を幸せだと思ったり、
感謝した事は、私には、
ない。
昨年、亡くなられた小林麻央さんのブログ『KOKORO.』。
世界からも注目を集めたこのブログを目にした方も多いと思う。
それ以外にも、TVや本などで難病や障害と闘って
懸命に生き抜いた方々の話や映像を見聞きする度、
私達は、必ずこう思う。
「今、この瞬間を大切に生きよう」
でも、
1週間も経てば、
ほら、当たり前の生活に慣れ、あの時の気持ちを忘れている。
今この瞬間を大切に生きるとは、言い換えてみると、
全ての事に感謝し、今ある幸せを噛みしめながら生きる事ではないかと思う。
今ある幸せに感謝し、今を精一杯生きる事を積み重ねて行く事で、
後悔の少ない、充実した豊かな人生を歩む事が出来るのかもしれません。
しかし、
人間は慣れる生き物。
当たり前の事に心から感謝し続けながら生きる事は正直、かなり難しい。
一方、
今この瞬間しか生きられない人もいる。
認知症や記憶障害のある方だ。
全ての方がそうというわけではないが、
記憶を維持する機能に障害がある為、ある意味、
今この瞬間を生きていると言えるのではないかと思う。
彼らはどうなんだろう。
病気の所為ではあるが、私達には困難な、
今を生きる事を常に積み重ねている。
彼らは幸せだろうか?
一つ問題がある。
彼らには、積み重ねて来たその日々を、
記憶に残す事がとても難しいという事。
記憶は、
自らが懸命に生きて来たと実感するための足跡の様なものだと思う。
彼らは振り返った時、
その足跡を確認する事が出来ない。
その事に気付いた時、
彼らは何を思うのだろうか。
彼らの気持ちを想った時、
私だったら彼らの様にいつも笑顔を絶やさず、
明るく生きて行く事が出来るだろうか。
私はそんな彼らの強さに惹きつけられ、
彼らの生き様に尊敬の念を持たずにはいられない。
人間は支え合い生きていく生き物だ。
彼らは、私が今を生きる事の大切さを忘れ、
慣れてしまわない様に、
いつも私の傍で身をもって示してくれる。
私は、彼らが力強く生きている、
今この一瞬一瞬の姿を、胸に刻む。
そうする事で、お互いが充実した豊かな人生になる事を信じて。
今日も、一緒に今を生きていく。