「 ささいな望み 」
先月号では触れませんでしたが、
実は、昨年の12月23日。
大浦家に新しい家族が増えました。
ヨシさん77歳。
アミさん73歳。
ご夫婦の方です。
おふたりは共に精神疾患を患って
おり、さらにご主人のヨシさんには半身まひがあります。
奥様のアミさんはひとりで身の回りの世話を頑張っていましたが、
次第に負担が重くなり、
介護施設に入居する事にしました。
おふたりはお出掛けや買い物が大好きで、施設に入居する際も、
その点は確認した上で入居されたそうです。
しかし実際に入居してみると、中々外出をさせてもらえず。
痺れを切らしたアミさんはスタッフの目を盗み、
数回施設の外に出てしまいました。
それを施設側に咎められ、退去を言い渡されたそうです。
そこで弊社に白羽の矢が立ちました。
12月の始めに体験をしたおふたりは、
レクレーションや食事、
そしてもちろん外出が出来る点などをとても気に入ってくれ、
すぐに大浦家の家族になる事を決めてくれました。
余程レクレーションや外出に飢えていたのか、
12月24日のクリスマス会に間に合うよう、23日に入居をする事にしたのでした。
その甲斐あって、
24日のクリスマス会や28日の餅つきなど、
入居早々に色々な外出やレクレーションを楽しんで頂く事ができました。
彼らには、大浦家に来て実現したい事がひとつありました。
それは、
『2人でパチンコに行く事。』
体験の際に、
おふたりに大浦家に来たら何をしてみたいか聞いた所、
そのように言われたのです。
しかし、それを実現するにはひとつ問題がありました。
元々おふたりには浪費癖があり、
おふたりで生活していた頃は、
かなりひどい生活状況だったそうです。
それをご家族が必死に立て直し、
権利擁護を利用するなどして、
現在の安定した状況にまで持ち直しました。
ですから、ご家族としては
また浪費癖が再燃するのではないかと心配していたのです。
そこで私は、ご家族様と権利擁護の担当者と相談し、
毎月のお小遣いの費用を決め、その範囲内でやりくりした上で、
残ったお金をパチンコ代として使用させて頂けないかとお願いし、
お許しを頂きました。
そして、ご夫婦おふたりにもこの条件を説明し、
納得して頂きました。
それからというもの、
特にご主人のヨシさんはパチンコに行く日を待ちきれないのか、
何度も私に、
『パチンコはまだ行きませんか?』
と聞いてこられました。
そして、1月31日。
おふたりは2年程ぶりに
久々のパチンコを満喫する事が出来たのでした。
それ以外にも、奥様のアミさんは
前の施設で中々出来なかった買い物にスタッフと一緒に定期的に行っています。
前の施設では色々と問題視されていたようですが、
今の所、おふたりの何が問題だったのかさっぱり分かりません。
むしろ、積極的にお手伝いなどもして下さるので、大助かりしています。
『たまにパチンコに行きたい。』
『たまにスーパーへ買い物へ行きたい。』
私達にとっては当たり前に行える望みにもならないささいな事。
それを少しお手伝いするだけで、こんなにも喜んでもらえる。
もちろん喜んで貰えて嬉しいのですが、その反面、
こんなささいな事が叶えたい望みになってしまう
現在の介護施設の現状を想うと、少し悲しくなってしまいます。
しかし、そんな現状を変えたくて弊社を創ったのです。
悲しんではいられません。
他がやらないのであれば、
うちはガンガンやって、
沢山喜んで、沢山楽しんでもらって、
介護施設ではやりたい事が出来ない。そんなのはやる気がないだけで、
やろうと思えば実現出来るという事を常に証明し続けて行こうと思います。
そしていつか、
この施設は入居者のやりたい事もできないの?
よその施設はどこも出来るのが普通ですよ。
そう言える世の中に早くなればいいなと思います。
その為にも、ヨシさん、アミさんの
おふたりには、今回の様なささいな望みだけでなく、まだまだ、
本当にやりたい事をどんどん実現していってもらいたいと思います。